日本衛生学会の更なる発展を目指して ―理事長就任のご挨拶―

日本衛生学会 理事長 遠山千春

日本衛生学会 理事長
東京大学大学院医学系研究科
健康環境医工学部門 教授
遠山 千春

日本衛生学会の会員各位ならびに同学会の活動にご関心を寄せて下さっている皆様、ご清栄のこととお慶び申し上げます。

この2012年3月の第82回日本衛生学会総会において、佐藤洋先生(国立環境研究所理事:東北大学名誉教授)に代わり、理事長に就任いたしました。皆様ご承知のことと存じますが、日本衛生学会は、日本医学会に所属する200あまりの学会の中でも、日本における医学発展の歴史とともに歩んできた由緒深い学会です。会員数は、2000人余りで、医学・健康科学のみならず他の関連分野とも連携した活動を行っています。日本衛生学会は、学会誌である ‘Environmental Health and Preventive Medicine’ に標榜されているように、環境保健と予防医学という衛生学の二つの大きな分野を2つの柱として成り立っており、いわゆる疫学系と実験系という方法論に支えられて発展してきました。

学会活動を活性化する試みとして、この数年、新たな事業が行われてきました。例えば、連携研究会や China Office の創設が上げられます。前者には、分科会的活動を行い、関連の他学会の会員を招待会員として迎えて日本衛生学会活動を活発化させるというねらいがあり、後者には、アジアにおける日本衛生学会活動の幅を広げていくことがあったように思います。また、ここ数年来の懸案であった Environmental Health and Preventive Medicine 誌の Medline 化が達成され、Springer 出版社を介した読者層の拡大の試みがなされてきています。さらには、若手研究者の育成・活性化をめざして顕彰活動をはじめさまざまな働きかけも行われてきました。他方、こうした試みの過程で生じていた財政上の問題は、佐藤前理事長のリーダーシップのもとに大幅に改善されたように思います。

今後、日本衛生学会を一層発展させていくためには、これまでの学会の活動状況、ならびに学会の制度と組織のあり方、さらには健全な学会経営について、良く考え (Consider)、新たな試みを行い (Challenge)、その試みを事業として創っていく (Create) ことが極めて重要です。今期は、この 3C をモットーにして進めていきたいと思います。ささやかな試みですが、既に 3 月の総会の機会に理事会準備会を開催して、今期理事会の新たな検討事項を議論し任務分担を決定しました。これまでは7月の第一回理事会で理事の分担が決定されてきましたが、今期は総会直後から、早速、広報委員会や選挙制度検討委員会、倫理委員会などが始動しています。また、少人数の話合いには Skype によるビデオグループ会議を取り入れることにしました。いつでもどこでも気楽に話合える環境を作れることで学会の機動的運営を進め、さらに時間の節約と経費の削減にも役立てようということです。

来年2013年の第83回学術総会は、城戸照彦先生が学会長の労をおとりくださり、「生を衛る学問の使命…環境と暮らしの再生を目指して…」とのテーマの下に金沢で開催されます。大学院生や若手研究者が参加したいと思う魅力的な学術総会にするためには、参加することで衛生学周辺の科学・技術の進展に触れ、啓発される研究発表や展示が充実していることが第一の要点と思います。また、同年代との繋がりや将来の展望がもてるよう人的ネットワークを築くきっかけとなる場を提供することも大事と思います。さらに国際性豊かな研究会とすることで学会の幅も広がることでしょう。既に、城戸先生が中心となりいろいろと企画を考えていただいていますが、会員の皆様のご要望やご意見を、学術総会事務局、あるいは学会事務局にお寄せいただくよう、お願いいたします。

日本衛生学会は、会員の皆様の学会です。環境保全と人類の健康の予防・増進のために日本衛生学会を共通のプラットホームとして、会員が共に考え、挑戦し、新たな展望を切り拓いて行こうではありませんか。理事長として微力ながら全力を尽す所存です。ご指導・ご鞭撻をよろしくお願いいたします。