2022年4月1日

一般社団法人日本衛生学会 理事長
宮崎大学医学部社会医学講座公衆衛生学分野 教授
黒田 嘉紀

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  日本衛生学会は1929(昭和4)年に「日本聯合衛生学会」に始まり、1930(昭和5)年に日本医学会の分科会となり、1949(昭和24)年に現在の「日本衛生学会」と改名されました。「日本聯合衛生学会」発足から90年が過ぎ、100年の節目も近づいており、日本医学会の中でも、歴史のある学会の1つです。その日本衛生学会は、2018(平成30)年1月から一般社団法人となり、社会的にも認められた団体として今後も疾病予防、健康寿命延伸等に寄与することが求められています。

 昨今、日本の研究レベルの低下が危惧されています。ノーベル賞受賞者を輩出している日本は今後氷河期を迎え、科学技術立国の地位が揺るぎかねないとも言われています。基礎研究は時間と労力を必要とし、一朝一夕には成果は見込めません。また努力が報われるという補償もありません。しかし基礎研究は“生命を衛る”ための科学技術発展には不可欠なものであることから、研究者相互のつながりを構築し、研究を支援することは日本衛生学会等の学会組織が担う役目であります。多くの研究者が各学会に所属し、建設的な議論を重ね、研究の高みを目指すことが重要です。

 日本衛生学会は、研究者のこのような活動を支援し、発表の場を確保し、その成果を称え、さらに研究者を鼓舞する組織として活動する必要があると考えます。そのためには継続性のある学会活動と活性化が必要であり、日本衛生学会におけるこれまでの活動をさらに実質化して参ります。

学会を活性化し社会から求められる活動を促進していきます

 長い歴史のある日本衛生学会の歩みをさらに進めるため、会員一丸となり学会の活性化を進めて参ります。そのためには学会員が同じ思いを持って活動できる日本衛生学会となる必要があり、会員の意見が反映された学会組織および学会活動の推進を理事会を中心に進めて参ります。

 その一環として、2021年度より開始された衛生学エキスパート制度は日本衛生学会独自の制度で、多種多様な会員が取得できる資格です。この制度の普及のためには社会的に認められる資格となることが重要です。学会をあげてその普及に取り組み、社会的価値を高めます。また社会医学系専門医制度についてもその普及に務めて参ります。

 また、科学の進歩には若い力が必要です。大学院を目指す学生の減少は、科学技術進歩への危機的状況を示すものです。日本衛生学会は次世代を担う若い研究者の育成をサポートするために、担当理事のもと若手研究者の活性化事業を推進し、学術総会では、若手研究者が企画運営する講演会を開催しています。今後も若手研究者の研究活性化のため、研究活動をサポートするとともに、発表の機会を確保し、若手研究者ばかりでなく、多くの研究者を会員として迎えられるよう、英文雑誌であるEHPMの質向上も含め、活発に活動する学会とします。

 さらに、学会活性化を目的に他学会との連携を推進し、横のつながりを構築し、ともに歩める学会活動を目指します。学術総会時に、他学会との共同シンポジウム等を企画し、連携事業を継続、実質化し、会員にとってメリットのある学会活動を推進して参ります。

男女共同参画が学会の発展に重要です

 日本衛生学会での女性会員は全体の約3割を占めています。多くの分野で、活性化のために男女共同参画の重要性が指摘されており、平成11年に制定された男女共同参画社会基本法の前文に「男女平等の実現に向けた様々な取組が、国際社会における取組とも連動しつつ、着実に進められてきたが、なお一層の努力が必要とされている。」と述べられています。日本衛生学会はこの精神のもと、男女共同参画に努めて参ります。

 現在低下傾向であった会員数は微増に転じ、英文雑誌のImpact Factorは3.0を上回り、4.0にも届きそうな状況です。このように日本衛生学会の社会的認知度は上昇して参りました。これまでの活動を継続するとともに、上記活動を通して、日本衛生学会のさらなる飛躍を目指していきたいと考えております。

 今後とも会員の皆様からのご意見ご助言を仰ぎながら、会員と軌を一にして学会の発展のために学会活動を促進する所存です。今後とも会員の皆様のご協力を承りたくお願い申し上げますとともに、日本衛生学会は多くの研究者の参加をお待ちしております。