理事長挨拶

2020年3月27日

一般社団法人日本衛生学会 理事長
東京慈恵会医科大学 副学長
環境保健医学講座 教授
柳澤 裕之

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  長與專齋が「生命を衛る」「生活を衛る」意味で“衛生”という言葉を用いるようになってから、約150年が過ぎました。衛生学の始まり(リンク)に述べたように、日本の予防医学、社会医学は“衛生学”から始まり、日本衛生学会はその中心となる学術団体として、人々の健康のために貢献してきました。 日本衛生学会は、2018(平成30)年1月から一般社団法人となり、2020(令和2)年3月までの2年間はおもに新体制の整備を進めてきました。これを踏まえ、次の2年間(2020(令和2)年4月~2022(令和4)年3月)は、日本衛生学会の“更なる活性化と大いなる飛躍”、そして、会員にとっても社会にとっても“魅力ある学会づくり”を目指してまいります。

 

 ①学会の見える化

学会活動をこれまで以上に活発に展開し、更なる飛躍を遂げるためには、学会員がそれぞれの立場でその役割を果たし、貢献することが求められます。そのためには、理事会が何を考え、何に取り組み、何を目指しているのか、それぞれの学会員に求められるものは何かを内外に明確に示し、会員から意見を集い、学会を双方向的に運営していきます。

 

研究会活動の活性化

多彩な分野を包含する多様性が本学会の特徴であり、様々な研究会が活発に活動を展開することが、学会の独自性とプレゼンスを高めることにつながります。研究会が活動しやすい環境を整え、研究会活動を活性化すること、時代のニーズを捉えた魅力ある研究を増やすことを目指します。若手研究者の研究活動を活性化するため、既存の「若手活性化委員会」の役割を明確にすると共に、他学会との連携を促進するため、「学会連携活性化委員会」を新設しました。

 

日本衛生学会エキスパート制度の確立と社会医学系専門医制度の拡充

学会員には、様々な職種の方が含まれることから、職種の枠を越えた資格制度を整備することが期待されていました。衛生学の専門家として内外に認められる資格ができれば、会員の活躍の場が増えると期待されます。2021年1月から、日本衛生学会独自のエキスパート制度が新たに始まりました。エキスパートと認められた会員は、省庁や保健所、衛生学関連研究機関及び検査機関、企業などからの相談や依頼に対応できる人材として、ホームぺージなどに紹介しています。 また、2017年度から開始された社会医学系専門医制度においては、サブスペシャリティーとしての本学会の価値を高めることに尽力する一方、自他ともに認める社会医学系専門医制度を確立するため、今後とも社会学系専門医協会に協力してまいります。

 

他学会との連携交流

本学会が取り扱う研究領域は、実験研究、疫学研究を始め、極めて多彩であり、様々な学会とコラボレーションすることが可能です。例えば、日本公衆衛生学会や日本疫学会、日本産業衛生学会は、主にヒトを対象とした研究を進めており、健康事象の原因(要因曝露)と結果(疾病発生)は把握できますが、その分子生物学的機序を解明することは困難です。本学会の動物や細胞を用いた実験的なアプローチはこの問題を解決するもので、両者のコラボレーションが様々な課題の解決に役立ち、社会に大きな貢献をもたらします。そのため、「学会連携活性化委員会」を中心に、他学会との連携交流を積極的に推進してまいります。

 

以上、私なりに考えていることを綴りましたが、会員の皆様からのご意見ご助言を仰ぎながら、学会の発展のために邁進する所存です。 衛生学、予防医学、社会医学に興味のある研究者の皆様、本学会への参加を心から歓迎いたしますので、まずは学術集会をのぞいてみてください。